今やイタリア料理に欠かせない存在であるトマト。しかし、実はイタリア料理に登場するようになったのは意外と最近のことだとご存知でしょうか?
トマトの原産地は南米ペルーやメキシコ周辺。16世紀に大航海時代を経て、スペイン人によってヨーロッパに持ち込まれました(日本では戦国時代にあたり、織田信長や豊臣秀吉が活躍し、鉄砲やキリスト教が伝来した時代です)。当初、ヨーロッパではトマトは観賞用植物として扱われ、食用としてはほとんど使われていませんでした。赤く熟した実が毒々しく見え、体に害があると考えられていたのです。

イタリアにトマトが伝わったのも16世紀頃ですが、本格的に食用として広まったのは18世紀以降と言われています(日本では江戸時代中期で、町人文化が栄え、浮世絵や歌舞伎が隆盛を迎えた頃です)。ナポリを中心とした南イタリアで、庶民の間でパンやパスタ、ピザなどと組み合わせて食べられるようになり、次第に定着していきました。
特に19世紀には、保存が利くトマトソースが生まれたことで(日本では幕末から明治維新の激動の時代で、鎖国が終わり近代化が進んだ時期です)、イタリア料理に革命が起きます。トマトは安価で栄養価が高く、南イタリアの強い日差しの下でよく育つことから、現地の食文化に見事にマッチしました。
今ではピザ・マルゲリータやパスタ・ポモドーロをはじめ、イタリア料理の定番メニューの多くにトマトが使用されています。イタリア料理とトマトの出会いは、まさに偶然が生んだ奇跡とも言えるでしょう。
次回は、そんなトマト料理の代表格「マルゲリータピザ」の誕生秘話をご紹介します。
